毎年、クリスマスの時期にアンリ大公殿下による国民に向けた年末スピーチが放映されますが、今年は2年に及ぶパンデミックや洪水など様々な困難の中での人々の連帯を訴えられました。欧米ではワクチン接種の判断などで社会が分断されるケースもありますが、殿下はスピーチで各個人の意見や決定を尊重する一方で、「個人の自由は他者のそれが始まるところまで(One’s freedom ends where that of others begin)」と延べられ、他者への配慮の必要性を指摘されています。

当貿易投資事務所の活動を統括しているルクセンブルク経済省の貿易投資局に8月に着任したパトリック・ニッケルス局長は、ルクセンブルクへの外国企業投資誘致に長く様々な立場で関わってきました。これまで何度も来日し、日本の企業文化にも理解がありますので、局長としても日本企業の力になってくれることを期待しています。ニッケルス局長のインタビューがクロスロード12月号に掲載されていますので、是非御覧ください。

今年7月に、ダイキン工業がルクセンブルクの単層カーボンナノチューブ世界最大手のスタートアップ企業、ルクセンブルクのOCSiAl(オクシアル)に出資し話題になりました。大企業はスタートアップへの投資やオープンイノベーションの機会を積極的に探しています。アジア最大のオープンイノベーションイベントである「Innovation Leaders Summit (ILS)」が2022年2月に東京にてハイブリッド形式で開催されますが、ルクセンブルクからも4社のスタートアップが参加し、日本の大企業とのミーティングやピッチに挑みます。3社はデジタルヘルス分野から、1社はオンラインの料理交流プラットフォームです。新しいアイディアやビジネスチャンスが生まれることを期待します。

12月8日にFINOLABにて開催されたハイブリッドセミナー、宇宙x金融#3「金融センター・ルクセンブルクの宇宙ビジネス戦略~金融業の未来にむけて~」では、ルクセンブルク宇宙機関(LSA)のマーク・ゼレスCEOがルクセンブルクの宇宙セクターや政府の宇宙戦略について講演した他、ispaceの中村COOから同社の描く月経済圏のビジョンや実現への行程などについて伺いました。私からは、11月に開催された宇宙カンファレンス「NewSpace Europe 2021」の金融に関するセッションの概要を報告させて頂きました。同イベントの動画が公開されましたので、ご興味のある方は是非御覧ください(https://youtu.be/qfSbqFjIPys)。

12月20日から日本ではデジタル庁による新型コロナウィルスのワクチン接種証明書アプリが公開され、デジタルデータとして証明書を携行できるようになりました。これまでは手続きも郵送による申請・交付だったので、申請者・自治体双方の手間が減ってなによりです。日本のワクチン接種証明書は現在ルクセンブルクで認められており、同証明書を持っていれば不要不急の入国も可能です。子供へのコロナワクチン接種は日本国内では来年3月の開始が検討されていますが、ルクセンブルクでも12月23日から始まりました。5歳から12歳の接種希望者が対象です。ルクセンブルクでは12月13~19日の新規感染者は前週に比べて5%増加しましたが、0歳から14歳のグループの増加率は16%と全ての年齢グループで最も多くなっています。また、ワクチン未接種者の感染リスクは接種済の人の2倍という結果も出ています。

9月に洪水被害にあったルクセンブルクの著名な日本料理店Kamakuraが全面改装を経て再オープンしたとのニュースが現地メディアで取り上げられました。昨年からコロナ禍での営業停止期間や洪水の浸水被害という苦境を乗り越えて、さらにパワーアップした同店の再開は現地のファンを喜ばせていることと思います。ルクセンブルクの和食ファンは、ミシュランと双璧をなすグルメガイド「ゴ・エ・ミヨ」がルクセンブルク年間最優秀シェフに昨年オープンした「Ryodo」の梶原亮人シェフを選んだことでも大いに盛り上がりました。9月にあるイベントでラーメンを提供したところ、大人気で初日で売り切れてしまったとも聞いています。ルクセンブルクから日本への観光ブームはコロナで水をさされたままですが、和食人気は健在のようです。

今年も大変お世話になりました。2022年も引き続き日本とルクセンブルクの経済交流を一歩でも先に進めたいと考えておりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

ルクセンブルク貿易投資事務所

エグゼクティブ・ディレクター

松野百合子

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