2023年6月パリにて開催されたテックスタートアップ見本市「ビバ・テクノロジー(ビバテック)2023」にて、ルクセンブルクのフランツ・ファイヨ経済大臣は、スタートアップ企業向けの最新ロードマップ: From Seed to Scale の導入を発表した。

このロードマップは、ルクセンブルク政府の戦略的ビジョンを反映したもので、スタートアップ企業が事業を拡大、成功させるために必要な一連の行動に焦点を当て、概説している。

本インタビューの中で、ファヨ大臣はロードマップを実施する背景を詳しく説明し、企業の潜在能力を最大限に発揮できるようにすることを目的とした既存のイニシアチブについての見解を述べた。

このスタートアップエコシステムのロードマップを考案するにあたり、何が原動力になりましたか? また、なぜ今のルクセンブルク経済にとって重要なのでしょうか?

ファイヨ大臣:   過去10年にわたり、ルクセンブルク政府は、スタートアップエコシステムの発展を支援してきました。この10年間の成長と着実な進展により、550社以上のスタートアップ企業と約15の公的・民間インキュベーターからなる魅力的なスタートアップエコシステムを構築することができました。これらの成功に基づき、現在スタートアップエコシステムは、次のステージへの到達を目指しています。エコシステムの継続的な発展を確実なものとするために、全ての関係者と幅広い協議を行いながら状況を把握し、今後数年間に実施すべき具体的な方策を特定する時期に来ていると考えました。本ロードマップでは、ルクセンブルクの競争力を高めるための行動を示しており、イノベーションとルクセンブルクの今後のスタートアップエコシステム支援の指針となるものです。

ロードマップには5つの優先すべき項目について書かれていますが、どうしてこれらに?

これらの項目は、ワークショップなどから明らかになった5つの主要開発分野を反映しています。ルクセンブルクのエコシステムに特化した一連の施策が盛り込まれていまるだけでなく、このロードマップには、ルクセンブルク自体の競争力を高めるためのアクションが示されています。

Start-up Directory は、ルクセンブルクのスタートアップエコシステムの力強い成長を反映しています。エコシステムの成長に伴い、多くのプレーヤー間の結束を強化するためには、どのようなアクションが計画されていますか?

今後もルクセンブルク全体の起業環境を改善し続ける必要がありますが、スタートアップコミュニティのプレーヤー間のつながりの強化および増加も、改善すべき分野の1つとして明確に認識されたことから、Dealroomと共同で新しいプラットフォーム: Start-up Directory(https://directory.startupluxembourg.com/intro ) を開発しました。このサイトでは、エコシステム内に存在する全てのスタートアップ企業をリストアップしています。企業の活動やベンチャーキャピタルの動向に関するリアルタイムのデータも閲覧ができ、国内外でのつながりを促進し、透明性を向上させ、ルクセンブルクのエコシステムの認知度を高めることを目的としています。若い起業家だけでなく投資家のニーズにも応えていると考えます。加えて、起業家、投資家、支援組織など、官民セクターのキーパーソンを集めた: Keystone Teams の設立も計画しています。これらのチームは、エコシステムの様々な活動に携わる予定です。また、エコシステムをより持続可能で包括的なものにするため、entrepreneurs in residenceというグループの創設も計画しており、できるだけ多くの人々に起業家になる機会を提供する意向です。ロードマップは、スケールアップに特化した新たな支援プログラムの導入も予定しています。

戦略の重要な要素は、スタートアップ企業をスケールアップ企業に変えることである。なぜスケールアップが重視されるのでしょうか?企業にとって、この移行を妨げる要因があるとすれば、それは何でしょうか?

状況を精査してみると、ルクセンブルクでは、アーリーステージのスタートアップ企業のニーズは、支援、施設拠点、資金調達のいずれの面でも十分にカバーされていることに気づきました。アクセラレーション・プログラム: Fit 4 Start (https://www.investinluxembourg.jp/ja/news/fit-4-start-2023/)は大成功を収め、この分野におけるルクセンブルクの強みのひとつとなっています。しかし、スケールアップとなると状況は異なってきます。

スタートアップからスケールアップへの移行は重要な段階であり、特にテクノロジー分野では移行が急速に進んでいます。一般的に事業拡大は、スタートアップ企業にとって大きな社会的、経済的影響を及ぼします。企業は、人員増加や資金需要に対処しなければならず、ビジネスモデルも機敏に対処できなくてはならない。このため、最新のFrom Seed to Scale のロードマップでは、スケールアップ企業に特化した新たな支援プログラムの導入を見込んでいます。また、イノベーションとスタートアップ企業向けの経済ミッションや海外の展示会に参加することで、より多くの資金調達を容易にし、ルクセンブルクにおけるスケールアップ企業の国際的な知名度を強化する計画もあります。加えて、スケールアップ企業のためのオープンイノベーションを加速させる計画もあり、国際的に有名なグループと接点を持てる見通しです。

ルクセンブルクにとって、スタートアップ企業やスケールアップ企業のための人材誘致は優先分野です。ルクセンブルクが優秀な人材や企業にとって魅力的な場所である理由は何だと思いますか?

他国のエコシステムと比較すると、ルクセンブルクの給与水準は高人材を惹きつけるのに役立っており、社会保障や年金制度も有利に働いています。また、ルクセンブルク大学や研究機関のおかげでトップクラスの研究者の誘致にも成功しており、特定の分野では最先端を走っているばかりか、世界のパイオニアでさえあります。スタートアップ企業やスケールアップ企業の人材確保は、国内だけでなく、欧州連合(EU)内でも大きな課題です。一般的に多くの企業が人材不足に直面しているため、スタートアップ企業にとって技術的・商業的なポストの採用は特に難しいでしょう。この問題に取り組むためのワーキンググループが、省庁間で設置されました。現在、スタートアップエコシステムは、次のステージへの到達を目標に動き出しています。

この戦略では、経済省が支援する公的イニシアチブ: Startup Luxembourgの強化に意欲をみせています。スタートアップエコシステム内では、このイニシアチブはどの様な役割を果たしていますか?

2019年に発足したStartup Luxembourgは、ルクセンブルクのスタートアップエコシステムのブランディングです。WebプラットフォームやSNSを通じて、ルクセンブルクのエコシステムを国内外へプロモーションし、ネットワーキングやビジネスチャンスの促進を目的としています。経済省の支援の元、国のイノベーション機関であるLuxinnovationが運営するプラットフォームですが、エコシステム内のすべてのプレーヤー(スタートアップ企業、インキュベーター、研究機関、公共機関など)にサービスを提供しています。イノベーティブな若手企業を対象とした国際的なイベントでは、ルクセンブルクを代表する「スタートアップ・ルクセンブルク(Startup Luxembourg)」というブランドを掲げています。

アクセラレーションプログラム: Fit 4 Startの開始以来、国際的なスタートアップ企業が参加しています。このプログラムは “From Seed to Scale “のビジョンにどのように合致していますか?

アクセラレーションプログラム: Fit 4 Start (https://www.investinluxembourg.jp/ja/news/fit-4-start-2023/)は、2015年の開始以来アーリーステージのスタートアップ企業に対し、そのニーズに合わせたコーチングと資金提供を行い、有効性を証明してきました。Fit 4 Startは、外国人起業家にも門戸が開かれているため、実に重要な可視化ツールとなっています。2022年、プログラムを運営するLuxinnovationへは、42カ国から304件もの応募がありました。この結果からみても、エコシステムの精査をするにあたり、成功例であるFit 4 Startプログラムを維持すべきことは明らかでした。ロードマップの最優先事項は、「立ち上げの瞬間から、スタートアップ企業を支援し続ける」ことです。この文脈としても、Fit 4 Startプログラムは、大きな成果を上げているといえるでしょう。

 

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本ニュースは、英語版で配信されたものを、当事務所で翻訳し、掲載しております。

原文はこちら: https://www.investinluxembourg.jp/news/supporting-the-development-of-the-start-up-ecosystem-in-luxembourg/

“From Seed to Scale” roadmap  (フランス語)英語版も配信され次第、お知らせいたします。

Start-up Directory : https://directory.startupluxembourg.com/intro 

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