2024年6月10日から13日の期間、ルクセンブルクの皇太子殿下を団長とし、グザヴィエ・ベッテル、副首相兼外務・対外通商大臣兼開発協力・人道支援担当大臣とレックス・デレス経済・中小企業・エネルギー・観光大臣が共同で率いる経済使節団が日本を訪問しました。日本とのビジネス展開や研究協力に興味を持つルクセンブルクの企業や機関の代表40 人からなる企業使節団も、この使節団のメンバーとして同行しました。来日中にはメディアへの露出も多く、13日のワールドビジネスサテライトでの特集で皇太子殿下のインタビューをご覧になった方から好意的なコメントを頂きました。
ギヨーム皇太子殿下が来日するのは2014年以来10年ぶりで、この間にルクセンブルクと日本の経済交流は大きく発展しました。2015年に日本の首相として初めて安倍元総理がルクセンブルクを訪問し、2017年にはアンリ大公殿下が国賓として招かれ来日し、両国関係の近しさが実感されました。大公殿下は、2019年の今上天皇陛下即位の礼と、2021年の東京オリンピックの際にも来日されました。ルクセンブルクの主要閣僚が定期的に来日し日本政府との対話を繰り返すようになり、二国間の航空協定調印、ワーキングホリデー制度導入、宇宙分野での協力覚書締結など交流の枠組み整備が進む中、企業活動も双方向で発展しています。楽天はルクセンブルクで取得した銀行免許に基づき2017年に現地で金融サービスを開始し、ispaceは2017年にルクセンブルク進出し、月面探査ローバー開発や欧州事業展開に注力しています。ルクセンブルクのテクノロジースタートアップが、日本企業からの出資受け入れや、子会社開設などで日本市場に進出する流れはこの5年ほど続いています。2022年には、JETROブリュッセルとルクセンブルクのイノベーション促進機関であるルクスイノベーションならびにルクセンブルク商業会議所が協力覚書を、また、スーパーサイエンスシティ構想を持つ茨城県つくば市とルクスイノベーションがイノベーション分野の協力覚書をそれぞれ締結し、スタートアップ企業を中心とした往来が始まりました。こうした交流実績を踏まえた経済ミッション来日とあって、実りある有意義な訪問となったと感じております。本ミッションの受け入れには多方面からご協力を頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。
今回のギヨーム皇太子殿下滞在中には、天皇陛下との謁見、秋篠宮家との会食、岸田総理、上川外務大臣、齋藤経済産業大臣との会談、経団連とのラウンドテーブルなどを通じて、幅広いレベルで二国間経済協力についての意見交換が行われました。また、6月12日には一昨年に交流の始まったつくば市を訪問し、つくば市長の歓迎を受け、国の主要研究機関である産業技術総合研究所(AIST)と物質・材料研究機構(NIMS)を視察、半導体や電池など重要分野の要素技術研究に触れる機会を得ました。さらにルクセンブルクとつくばの企業交流イベントでは、NIMS発の断熱素材ベンチャー、サーマリティカのルクセンブルク拠点設立が発表されました。また、最終日に開催されたルクセンブルク・日本ビジネスフォーラムには200名近くが参加し、オープニングセッションにギヨーム皇太子殿下、デレス経済大臣、経団連の原常務理事、テーレン商業会議所ディレクター・ジェネラルが登壇しました。同セッションの最後に調印された「宇宙航空研究開発機構(JAXA)とルクセンブルク宇宙機関(LSA)との間の平和目的のための宇宙活動分野における協力覚書」は、宇宙探査、スーパーコンピュータや設備の相互利用、商業化などの分野で今後、両宇宙機関間の協力に向けた議論を可能にするものです。また、この協力覚書に基づき、同日JAXA とLuxProvide 社との間でスーパーコンピュータの活用促進に関する基本合意書(Letter of Intent)への署名が行われました。ビジネスフォーラムの2つの分科会では、「データマネジメント」と「宇宙産業」というそれぞれのテーマで、政策に関するキーノートスピーチに加え、両国から企業スピーカーを迎えたパネルディスカッションが行われました。
6月26,27日にルクセンブルクで開催の新テックイベント『Nexus2025』には5社の日本スタートアップがルクセンブルク経済省の招待で出展します。また、ルクセンブルクでの子会社設立を発表したサーマリティカも、現地のアクセラレーションプログラム参加企業として、同イベントに出展します。ここでもまた新たな交流や事業拡大の機会が得られることを願います。
7月8日から都内で開催の宇宙ビジネスカンファレンス『SPACETIDE』の宇宙資源に関するパネルに、ルクセンブルクの欧州宇宙資源イノベーションセンター(ESRIC)が来日登壇します。ルクセンブルク政府系インキュベーションであるTechnoportの幹部も同週に来日し、複数のイベントで、ルクセンブルクのスタートアップエコシステムと宇宙セクターについて日本企業に向けて発信する予定です。