師走となりましたが、今年は冬になって勢いを増すコロナウィルス感染症への懸念から、緊張感と不安の拭えない異例の年末です。ヨーロッパは日本より状況が厳しく、ルクセンブルクでも先月から始まった夜間外出制限やバー、レストラン、フィットネスなどの閉鎖を1月15日まで継続するとしています。これらが奏功してか、新規感染者数は減少し始めたところですが、クリスマス時期の人との接触を極力限定するように、政府は国民に協力を求めています。その一方で、コロナ禍に苦しむ経済への救済措置を盛り込んだ2021年度予算が国会を通過し、国民一人あたり換算で約5000ユーロ規模の財政出動が承認されました。これにより、政府の財政赤字は対GDP比29.5%に達することになり懸念されていますが、これはEU加盟国内で最も低い財政赤字比率でもあります。
EUで近々ファイザー社製コロナウィルスワクチンが承認される予定であることから、ルクセンブルクで開設予定の4つのワクチン接種センターのうち1つで、16日にシミュレーション研修が行われました。センターは、今回研修が行われたルクセンブルク市内のものに加え、空港、ベルヴァル(南部)、エテルブリュック(北部)に開設されます。
ルクセンブルクでは、過去20年の間に人口が3割以上増加していることに伴い、道路や建物、公共交通機関や学校など、様々なインフラ整備が常に行われています。最近の大きなニュースはトラムがEU関連機関やコンサートホールなどが建ち並ぶキルシュベルク地区から旧市街を通ってルクセンブルク中央駅まで開通したことです。コロナ禍でも工事を遅らせることなく予定通り完成し、開通式にはアンリ大公殿下も参列されました。120年近く前に建てられたアドルフ橋の上を未来的なデザインのトラムが走る姿を早く実際に眺めてみたいものです。
12月21日発売の週刊東洋経済にフランツ・ファイヨ経済大臣のインタビューが掲載されました。シュナイダー前経済大臣の方針を引き継ぎながら、データ駆動形経済と循環型経済をあらゆるセクターに実装することで、長期的競争力を維持しようというファイヨ大臣の考え方が延べられています。宇宙セクターやイノベーションにかける想いは前任者と変わらないようです。是非ご覧頂ければ幸いです。
先日、ルクセンブルクに3つあるユネスコ世界遺産の1つ、無形遺産である『エヒテルナッハのダンスの行進』を紹介するウェビナーが、在日ルクセンブルク大使館により開催されました。エヒテルナッハ出身のルクセンブルク大学のウィルヘルム名誉教授のスライドは、中世から続く同行事の起源についての諸説など興味深い内容でした。また、上智大学元副学長でもあるルクセンブルクのオロリッシュ枢機卿がゲストスピーカーとして参加され、同伝統の意義や今も続くドイツからの巡礼の様子などを日本語でご説明下さいました。枢機卿から、日本の方も是非ご参加下さいとのお言葉もありました。将来、この行事開催日にルクセンブルクへいらっしゃることがありましたら、ルクセンブルク北東部の街、エヒテルナッハまで足を延ばしてはいかがでしょうか。
今年も当事務所へ暖かなご支援を頂戴しまことにありがとうございました。来年も変わらぬご厚情を賜われれば幸いです。
皆さま、よいお年をお迎え下さい。
ルクセンブルク貿易投資事務所
エグゼクティブ・ディレクター
松野百合子