6月23日はルクセンブルクのナショナル・デイ、大公殿下の誕生日を正式に祝う日です。ロイヤルファミリーや閣僚の挨拶、花火、軍隊パレード、街中で繰り広げられるパーティーなど、華やかな行事の数々をルクセンブルクの人々は毎年楽しみにしています。コロナ禍が始まってから中止や縮小されてきたナショナル・デイが、ついに今年はパンデミック以前の形で開催されたそうです。ルクセンブルクのSNSには、夜空を埋め尽くす花火の画像があふれ、皆の喜びが伝わってきました。
東京のルクセンブルク大使館では、今年は3年ぶりにナショナル・デイ祝賀会の開催に踏み切りましたが、感染症対策のため、非常に限られた人数で都内のホテルにて行う形になりました。フェリング大使は冒頭のスピーチで、パンデミックや困難な国際情勢の中でもルクセンブルクと日本の二国間関係は良好であることの象徴として、東京オリンピック開会式へのアンリ大公殿下のご参列や、大阪・関西万博2025へのルクセンブルクのパビリオン出展をあげました。大阪万博のルクセンブルク館デザインコンペの結果が6月10日に発表されたばかりだったので、デザインコンセプト「Doki Doki Lux」を大使がご紹介すると、会場から驚きの声があがりました。来賓としてご挨拶に立たれた林芳正外務大臣は、日本・ルクセンブルク友好議員連盟会長としてルクセンブルクを訪問された思い出を語られ、また「Doki Doki」は最近は日本では「チムドンドン」ともいうようだ、と朝の連続テレビ小説とかけて皆の笑顔を誘いました。澤部名誉総領事の乾杯のご発声のあと、今回ユーハイムに特別にご用意頂いた背の高いバウムクーヘンがサービスされました。ルクセンブルクでは結婚式などのお祝いの席では、大きなバウムクーヘンで来賓をもてなすのが伝統です。バウムクーヘンがドイツとルクセンブルクの国境にまたがる地域の伝統菓子であることを初めて知ったというお声を多く頂きました。コロナの不安が残るなか、そろりと再開した東京のナショナル・デイ祝賀会でしたが、以前のように盛大に開催できるのはいつになるでしょうか。
大阪万博2025のルクセンブルク館のデザインコンセプトは「Doki Doki Lux – the Luxembourg Multiverse」です。来場者が複数の建物の間を自由に回遊できる構造や360度や3Dの映像体験など、リアルとバーチャルの間を行き来しながらルクセンブルクを体感できるパビリオンになりそうです。パビリオンが循環型経済の実現を目指しているのも特徴です。今回、パビリオンデザインコンペで優勝した建築事務所、シュタインメッツ・ドゥメイエールはこれまでに京都の町屋の再生プロジェクトに携わるなど、日本とも縁の深い事務所です。
ルクセンブルクのテックイベント、ICT SPRING2022にてルクセンブルク経済省が提供する無料ブースとピッチ枠には多くのご応募をいただきましたが、最終的にデジタル・ブラスト、oVice、スペース・シフト、SWAPay、ワープスペースの6社が選出されました。oVice, スペース・シフト、SWAPayはさらにピッチも行う予定です。ICTSPRING前日には、ルクセンブルクのスタートアップエコシステムを知るための視察ツアーを当事務所で企画し、またルクセンブルク経済省が世界各地から選出された貿易投資事務所推薦スタートアップのために特別に開催するセミナーが行われます。日本のスタートアップに充実した体験をしていただくために、私と当事務所の中丸も現地で応援します。
昨年はベルギー・ルクセンブルク経済同盟(BLEU)の100周年でした。第一次大戦直後に結ばれたこの同盟では、ユーロ登場の約80年前に通貨統合を果たし、互いの市場を開放しあうことで2か国が経済を発展させました。ルクセンブルクは当時世界有数の鉄鋼産出国でしたが、この同盟のおかげでアントワープ港からアメリカなど欧州域外へルクセンブルクの鉄鋼が多く輸出されたといいます。実はルクセンブルク産の鉄鋼は、ニューヨークのエンパイアステートビルやサンフランシスコのゴールデンゲートブリッジなどにも使用されています。このBLEU100周年を祝う会が、ベルギー、ルクセンブルク両国の駐日大使をホストとして6月14日にベルギー大使館にて開催されました。コロナで何度も延期になったのちの開催でしたが、ベルギー・ルクセンブルク商工会議所(BLCCJ)をはじめとする関係者が集いました。
エグゼクティブ・ディレクター
松野 百合子