「ESG(環境、社会およびガバナンス)」という言葉が次第に社会に浸透してきたと感じます。「持続可能性」という日本語の微妙な座りの悪さも、以前より気にならなくなってきました。2017年にルクセンブルクのアンリ大公殿下がアレクサンドラ王女殿下を伴い日本を国賓として訪問された際、これを記念して『ルクセンブルク金融セミナー 金融の持続可能性:世界の責任投資とグリーンファイナンス』をアレクサンドラ王女ご臨席のもと都内で開催しました。グラメーニヤ財務大臣や玉木元OECD事務次長によるグローバルな視野での政策の話や、金融機関らの取り組みなどが披露されましたが、当時、日本ではESG投資という概念自体を説明することが多かったことが思い出されます。
ルクセンブルクで2006年に設立されたLuxFlag (Luxembourg Finance Labelling Agency)は、持続可能な投資を促進することを目的に、適格金融商品に認証ラベルを発行しています。LuxFlagによれば、2021年4月1日時点で、同機関からESG認証を得たファンド数は2年前から472%、1年前との比較でも114%という大きな伸びを示しています。また、世界初のグリーン債専門取引所(LGX)を2016年に開設したことで知られるルクセンブルク証券取引所は、その後ESG投資ファンドの上場も開始し、サステナブル・ファイナンス・ハブを目指すルクセンブルク金融センターの要の一つとなっています。LGXが、昨年4月に新型コロナウィルス感染症対応を目的としたソーシャルボンドなどの上場手数料を一時免除する方針を迅速に打ち出したことも業界で評価されました。
ルクセンブルクのスタートアップ企業の日本進出が増えています。革新的で洗練された音楽印税取引所の開設で世界でも注目されるANote Music (エイノート・ミュージック)が、日本で同様の事業を行うロイヤリティバンクと業務提携しました。誰もが楽曲へ投資したり、ミュージシャンやレコード会社が販売する権利を購入することができる同プラットフォームは、投資家と音楽版権所有者の両方にメリットをもたらす画期的なシステムです。昨年11月に東京事務所を開設したSNS解析のTalkwalkerに続く、ルクセンブルクのスタートアップによる日本上陸で、当事務所も嬉しく思います。
日本で活躍するルクセンブルク企業をご紹介するインタビューシリーズを開始しました。第一回は、欧州首位の貨物航空会社であるカーゴルックス航空をとりあげ、岩田総支配人にお話を伺いました。コロナ渦で旅客便が減少する中、グローバル物流を支えた同社の取り組みは、決断が迅速で、良いアイディアは試してみるというカーゴルックス航空の社風の現れと言えます。当事務所のウェブサイトにインタビュー記事を掲載していますので、ぜひご覧ください。
ルクセンブルクの欧州宇宙資源イノベーションセンター(ESRIC)が主催するカンファレンス『Space Resources Week』2021が開催されました。2018年に『Mining Space Summit』として始まった際にはたった1日のイベントでしたが、宇宙資源の探査・採掘と商業利活用までを技術、政策、金融など幅広い側面から話し合うという趣旨は変わりません。当初から日本の機関、企業にご参加いただいており、今年ははやぶさ2のミッションマネージャーのJAXAの吉川先生が基調講演され、またポスターコーナーに東北大学大学院の吉田研究室とルクセンブルク大学との月源探査関連技術のための共同研究の内容や、東京工業大学工学院の坂本・古谷・中西各研究室とサカセ・アドテック株式会社によるORIGAMIプロジェクトの紹介などが行われました。
当事務所スタッフがルクセンブルクに出張される日本企業の方とお話する際に、現地でのビジネスマナーについてご質問されることがよくあります。そこで、そうした疑問に短い動画でお答えするシリーズ『ルクスに入ったらルクスに従え』を制作することにいたしました。完成したら当事務所のYouTubeチャンネルに掲載し、SNSで告知する予定です。自分たちで作る素人動画ではなりますが、当事務所スタッフの渾身の演技もご期待ください。
ルクセンブルク貿易投資事務所
エグゼクティブディレクター
松野百合子