国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)から誕生した株式会社Thermalyticaは、ルクセンブルグに新会社を設立することを正式に発表した。同社は、地球と宇宙の両方に対応できる高性能断熱材の開発と普及を目指したスタートアップ企業です。オフィスは、ルクセンブルク南部に位置する公共技術ビジネスインキュベーター、テクノポート内に設置される予定だ。同社の共同創業者兼CTOのラダー・ウー氏は、「ルクセンブルクに子会社を設立することは、欧州市場へ進出する我が社にとっても、大きな一歩です」と語った。
2024年6月10日から13日の期間、ルクセンブルクの皇太子殿下を団長とし、グザヴィエ・ベッテル副首相兼外務・対外通商大臣兼開発協力・人道支援担当大臣とレックス・デレス経済・中小企業・エネルギー・観光大臣が共同で率いる経済使節団が日本を訪問した。Thermalyticaの新会社設立発表は、12日茨城県つくば市内で開催された「Tsukuba x Luxembourg Startup Night 2024」において行われた。
レックス・デレス経済・中小企業・エネルギー・観光大臣は次のようにコメントした。「サーマリティカがルクセンブルクにオフィスを開設することを嬉しく思います。この事例は、ルクセンブルクが欧州市場やその先へアクセスするための戦略的な拠点としての地理的な優位性を示します。さらにルクセンブルクのFit 4 Startは、革新的な技術を開発する外国のスタートアップがルクセンブルクに魅力を感じるプログラムであることを示しています。この成功事例が、他の日本のスタートアップにこの道を進むインスピレーションとなることを願っています。」
Thermalyticaは、2021年に茨城県つくば市で設立された。同社は、革新的な材料ソリューションによって気候変動対策に取り組むディープテックスタートアップ企業であり、エネルギーインフラ、航空宇宙、世界の水素サプライチェーン、そしてネット・ゼロ・エネルギー建築などの主要セクターで使用できる地球と宇宙の両方に対応可能な革新的な熱ソリューションを提供する特許材料技術(TIISA®)を開発した。Thermalytica社は、日本政府の支援を受けたNIMSの16番目のスピンアウト企業であり、NIMSから直接的な投資を受けた唯一の企業である。さらに、同社は2023年に日本の経済産業省(METI)によって「J-Startup」に選ばれた。経済産業省は年間10,000社以上の企業から50社を選び、この名誉ある称号を与えている。
Thermalyticaのルクセンブルクとの最初の出会いは、2023年のことだ。同年、選ばれた「J-Startup」として、つくば市の五十嵐立青(いがらし たつお)市長が率いる企業使節団に正式メンバーとして参加した。この代表団は、ルクセンブルクで重要なICT SPRING 2023に参加し、サーマリティカは出展者として製品とサービスを紹介した。訪問中に受けた暖かい歓迎でサーマリティカはルクセンブルクのFit 4 Startに応募することになった。
スタートアップアクセラレーションプログラム: Fit 4 Startについて
Fit 4 Startは2015年に創設されたアクセラレーションプログラムで、ルクセンブルク経済省が主導し、ルクスイノベーションが運営している。対象は、世界中の設立5年未満のスタートアップだ。このプログラムは、デジタル、ヘルステック、宇宙技術のスタートアップを初期段階から6か月間の5万ユーロの資金援助と、初期段階のニーズに対応した個別の指導を提供している。さらに、このプログラムに参加したスタートアップがプログラム開始から12か月以内に民間資本を調達すると、追加で10万ユーロが提供される。2023年10月、サーマリティカは日本のスタートアップとして初めて、対象企業20社の1社として選出された。現在2024年Fit 4 Startプログラム実施期間中である。
ウー氏は次のように述べた。「2023年にルクセンブルクを初訪問してから、全てが非常に速く進んだ。Fit 4 Startに参加できたことは、スタートアップの発展における真のマイルストーンだった。ルクセンブルクにおける新会社の設立は、ヨーロッパ市場への進出において、私たちにとって一つの大きな段階である。ルクセンブルクのスタートアップエコシステム内で支援と協力の精神が広がっていることに大きな感銘を受けた。Fit 4 Startからのサポートは、特に、戦略の確立やヨーロッパでの潜在的な顧客の特定などにおいて非常に力強いものであった。これらの理由から、ルクセンブルクからのヨーロッパ進出を始めることはきわめて合理的と言えるだろう」