【ルクセンブルクワインラボ 研究員紹介】

  • 松野所長:一応ワインスクールで学んだ、なんちゃってワインプロ。ルクセンブルクワインを日本で広めるという密な野望を持っている。
  • 中丸研究員:ラボ一番のエピキュリアン兼グルマン。美味しいものの話になると目の輝きが違う。ワインと料理のマリアージュには興味津々。
  • 石黒研究員:「いつかは資格を」と、高い志でワインの勉強会や試飲会に積極的に参加するが、気がつくと楽しく飲んでいる、生粋のノムリエ。

第一回『シャンパーニュを理想とした創業100年のメゾン ベルナール・マッサール』後編

【前回のあらすじ】仕事でなんとなく知っているルクセンブルクワインをきちんと理解したいと言いだしたルクセンブルク貿易投資事務所のメンバー。それを聞いて立ち上がった松野は、「ルクセンブルクワインラボ」を急遽設立することに。最初の研究テーマに選んだのは、ルクセンブルク最大のクレマン生産者であるベルナール・マッサールだった。繊細で上品な味わいのロゼ・クレマンを堪能した所員は・・・。 前編はこちら

: 次のボトルはこちらです。

  • ベルナール・マッサール ”ミレジメ ブリュット2015

( ピノ・ブラン/リースリング、アルコール度数12%)

中:これにはAOPラベルがありますね。ということは、100%国産ぶどうが使われている!

:大正解!あと一つ、これまでのボトルとは違う点がありますが、わかりますか?

:ボトルのデザインはかなり違いますね….。Millesimeって、シャンパーニュのラベルでも見たことありますよ。これに関係していますか?

:よく気が付かれましたね。シャンパーニュは通常は複数年のベースワインをブレンドして作るので、ヴィンテージ(生産年)の記載がありません。ところが、作柄が良かった年のみのブドウで作る、特別なシャンパーニュがあり、これを「ミレジメ(Millesime)」と呼ぶのです。一般的には各メーカーの高級ラインアップという位置づけです。

ルクセンブルクでも2015年のワイン法改正で、ミレジメ呼称が認められました。クレマン・ド・ルクセンブルクを名乗るには、国産ブドウ、瓶内二次発酵、最低9か月の瓶内熟成などが義務付けられていますが、ミレジメになるとさらに瓶内熟成期間が最低24か月となります。

:瓶詰してから2年してようやく出荷なんですね。2015年ヴィンテージということは、法律ができて初出荷のミレジメですか!

:記念すべきヴィンテージですね。それでは、初のミレジメ・クレマンを試飲してみましょう。色はきれいなレモンイエローですね。少し大きめの泡が立ち上っていて勢いを感じます。

:爽やかな香りですね。レモンとか、フルーツを感じます。

:洋梨もある気がします。

:あとは、パン屋さんに入ったときに感じるイースト香もありますね。口に含んでみるとどうでしょう。

:かなり辛口です。わりとハードな印象の味わいですね。

:これだけで飲むより、食事と合わせるのに向いている気がします。

:そうですね。泡も舌にイキイキとした刺激を感じさせますし、しっかりした酸味があるので、幅広いお料理に対抗できそうですね。

:個人的には味の濃いボリューミーな食べ物に合わせたいですね。カスレとか、フォアグラとか。あとはルクセンブルク郷土料理の揚げ物系ですね。モーゼル川沿いのブラッセリーや世界最古の移動遊園地「シューバーファウアー」などでよく目にする、Gebake Fësch (鱒の姿揚げ)やグロンペルキッシェルシャー(ジャガイモのパンケーキのようなもの)などに、このドライな味わいがベストマッチすると思います。

:シューバーバウファーの屋台フード、いいですよね。その流れで想像が膨らみましたが、レモンを絞ったフライドチキンやクアトロフォルマッジ(4種類のチーズのピザ)も絶対合いそうです。

:酸が強いので、確かに揚げ物とよく合いそうですね。カリフォルニアロールや海老フライロールとか、、邪道かもしれませんが、個人的には合わせてみたいです。また、ルクセンブルクのホテル?モーゼル地方のホテル?の朝食ビュッフェには、クレマンが置いてあることがありますよね。そうした「目覚めの一杯」に最適かと思います!

 

:さて、今日最後のボトルは、こちらです!

  • ベルナール・マッサール”キュヴェ1921 ブリュット”

   (シャルドネ / ピノ・ブラン/ピノ・ノワール/リースリング/ピノ・グリ、アルコール度数12%)

 

:すごい。黒いボトルに黒と赤のラベルデザインが際立っています。きれいですね。

:1921っていうことは、1921年に瓶詰めされたクレマン・・・なんてことはないですよね!?

:残念ながら(苦笑)。ちなみに、有名なシャンパーニュメゾン、モエ・エ・シャンドンは、ヴィンテージのついたミレジメ・シャンパーニュをドン・ペリニヨンという名前で販売していますが、一番最初のドン・ペリニヨンは1921年のものだったそうです。現存しているものがオークションで3本2500万円くらいで落札されたとか・・・。

1921年は、ベルナール・マッサールが創業された年で、今年は100周年にあたります。なので、これは100周年記念に作られた特別なクレマンなのです。

:ドンペリの歴史を聞くと、ベルナール・マッサールのクレマン造りの歴史の重みを改めて感じます。

:歴史を噛みしめながら、試飲してまいりましょう。

:色は淡いクリーム色です。細かい泡も見えます。4本目になってくるとだんだん慣れてきますね。

:クレマンばかりなのでどうなるかと思いましたが、本当にそれぞれ違うものですね。これは口の中に泡が広がります。

:このキュヴェ1921は、使用ブドウ品種を見ると、キュヴェ・ド・レキュッソンがベースになっているようですね。100%ルクセンブルク産のブドウでAOPルクセンブルクラベルを取りながらも、ジャン=ベルナール・マッサールが創業当時から目指したシャンパーニュに匹敵する味わいを追求しているのでしょう。

:他の2本と比較すると、アルコール度が強い気がしました。香りは、ハチミツっぽさがあります。スイーツと食事の両方が楽しめるアフタヌーンティーのお供に最適かと思いました!

:わずかに青リンゴの香りがします。味わいはドライで、甘みは少なめに感じます。とてもバランスが良いので、どのような食べ物にも合うマルチプレイヤーですね。個人的にはレモンをしっかり絞った生牡蠣などと一緒に、アペリティフとして味わうと最高だろうなと思いました。完璧なマリアージュです!

:香りはボリュームがあり、同時に爽やかさを印象付けてくれます。味わった最後に残るきれいな酸味が心地よいですね。素材の風味を壊さず引き立てそうな気がするので、鯛のカルパッチョや白身魚の天ぷらと一緒に飲んでみたい。

:嬉しいことに、この100周年記念クレマンも日本で販売されることになっています。実は今年ルクセンブルクで100周年を祝うのはベルナール・マッサールだけではありません。ベネルクスやEUに先駆けて欧州で一つの経済圏を作ったベルギールクセンブルク経済同盟も1921年に結ばれました。これにより、ルクセンブルクとベルギーは、ユーロ登場の80年近く前に通貨統合していたんですよ。第二次世界大戦末期に始まったベネルクス関税同盟が有名ですが、ルクセンブルクとベルギーは実は欧州統合の本当の先駆者なのです。

(今年発売の記念ユーロコインには、ベルギーのフィリップ国王とルクセンブルクのアンリ大公の横顔が)

ベルナール・マッサールは素晴らしいワインで顧客を獲得したのはもちろんですが、同社が創業したちょうどその時に、ベルギーとの関税がなくなったこともその発展に影響を与えています。美食の国でありながら、伝統ワイン生産国ではないベルギーでベルナール・マッサールのワインは広く親しまれています。

:このキュヴェ1921をきっかけに、壮大な歴史を語れますね。

:ベルナール・マッサールを私も訪問しましたが、建物もテイスティングルームもとても素敵でした。日本から観光でルクセンブルクを訪問される方にもおすすめのスポットです。

:醸造所の見学コースもありますし、晴れた日にモーゼル川を眺めながら試飲するクレマンは最高ですよね。売店では、これらクレマンに加えて、ベルナール・マッサールが所有する他のワイナリー、シャトー・ド・シェンゲンやドメーヌ・ティルの白ワインも売っています。こちらも超おすすめです。シャトー・ド・シェンゲンといえば・・・

:所長、今回はクレマンしか用意していません!

:それでは、ベルナール・マッサール傘下の他ワイナリーについては、別に試飲セッションやりますか?

:おっと、失礼しました!そうでしたね。それでは、改めて機会を設けましょう。お疲れさまでした。

【次回へ続く】

 

今回紹介したワイナリー

ベルナール・マッサール   https://www.bernard-massard.lu/en/

ルクセンブルクで5世代に渡り継承される家族経営のワイナリー。1931年にはルクセンブルク大公国宮御用達となり、ルクセンブルクを代表するワイナリーのひとつとして高品質なワイン造りを行う。「クレマン」と呼ばれるシャンパーニュ製法のスパークリングワインで有名だが、上質なスティルワインも高評価。

ベルナール・マッサールのワインを日本で買えるのはこちら:

 

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